記憶と伝承の色彩「三陸鉄道駅貼ポスター掲出」実施報告

■期間 令和3年3月1日~4月1日
■区間 三陸鉄道沿線41駅
■後援 (公財)岩手県観光協会、岩手日報社、三陸鉄道宮古本社、テレビ岩手

■東日本大震災から10年、新しい東北へのエール

 2011年3月11日の東日本大震災から10年が経ちました。
 各メディアでは、「被災地・住民のこの10年と今」「震災の記憶を風化させない」「将来の災害への対策と準備」「この10年の復興援助の総括とこれからの支援のあり方」など、多くの観点から被災地について報道されましたが、実行委員会を置いている国民みらい出版でも、この10年、作品に込められたメッセージ性を活かしたアートと文学作品による被災地応援イベントを実施してまいりました。
 今回は10年の節目となり、イベント実施にあたり従来とは異なるアプローチを図ることが必然となりました。会期会場が限定される展覧会は、被害が広範に及ぶ被災地では相応しくないと考えたからです。そこで、「記憶と伝承の色彩」をテーマにアートや詩歌を起用した駅貼りポスターを、被害の大きかった三陸鉄道各駅に掲出するという手段を択ることになりました。
 実施にあたりご協力頂いた三陸鉄道は、地震による大津波によって鉄路や駅舎に壊滅的な被害を受けました。しかし、震災から5日後には早くも一部路線で運行を再開することで被災者を勇気づけました。ところが、再び災難に見舞われます。2019年の台風19号で一部区間運休を余儀なくされ、ようやく全線復旧した矢先、新型コロナウイルスの影響を受けました。それでも尚、地域住民の交通のため、旅行者・鉄道ファンを楽しませるため、何度も立ち上がる姿は、震災を乗り越え次のステージへと向かう東北の姿と重なり、復興のシンボルとなりました。
 ここでは駅舎の写真を掲載しておりますが、沿線には未だそこかしこに震災の爪痕が残されています。仮に全てが元通りになっても、沿線住民の方々の心に刻まれた悲しい記憶を消し去ることは出来ないでしょう。
 被災の記憶とコロナ過で苦しむ中、今回の「記憶と伝承の色彩ポスター」を目にすることで、駅を利用された方々の辛く悲しい記憶や感情がいっときでも和らぎ、前向きな気持ちを持って頂けたなら、この企画を実施した意味があったものと考えます。
 当初の予定では、2週間ずつ前期・後期に分けてポスターを掲出する予定でしたが、三陸鉄道の協力によってすべて同時に1ヶ月間の掲出となりました。多くの方の目に留まり、癒しや活力につながったことと信じております。

【三陸鉄道駅(一部)の解説】
 ドラマ「あまちゃん」の舞台としても有名な三陸鉄道は、岩手県のリアス式海岸に沿って約160キロ走っています。“さんてつ”という愛称で親しまれ、長く地元住民の足として活躍しています。現在、第三セクターとして日本最長の鉄道路線を誇り、震災復興の象徴的存在になっています。
●久慈駅
 三陸鉄道北リアス線の発着駅で、「あまちゃん」では北三陸駅のモデルとなりました。駅の愛称は「琥珀いろ」。久慈市が琥珀の産地であることに由来します。陸中海岸国立公園の北の玄関口として、『東北の駅百選』に選定されています。
●陸中野田駅
 道の駅と一緒になった全国でも数少ない駅です。駅の愛称は「ソルトロード」。野田村は昔、天然塩をつくり、塩を運ぶ重要拠点だったことに由来します。ドライバーも利用する、とても便利な駅として、『東北の駅百選』に選定されています。駅舎には「三陸防災復興展示会」として各復興セレモニーなどの様子が掲示されています。
●田野畑駅
「あまちゃん」では畑野駅のモデルとなりました。駅の愛称は「カンパネルラ」。宮沢賢治の童話「銀河鉄道の夜」の登場人物の名前に由来します。のどかな環境に佇む、心休まる和風の駅舎として、『東北の駅百選』に選定されています。ネスレ日本の震災復興応援プロジェクトとして、吉浜駅とともに駅舎の壁面に桜の花が描かれました。
●宮古駅
 有名な「浄土ヶ浜」の最寄り駅です。駅の愛称は「リアスの港」、三陸観光の玄関口であることに由来します。潮風を感じる賑わう港町の駅として、『東北の駅百選』に選定されています。
●津軽石駅
 駅の愛称は「鮭の町」。津軽石川には毎年多くの鮭が遡上し、鮭漁が盛んなことに由来します。会期中の3月20日、全線復旧から1年を記念して「津軽石さんさ踊り」で盛り上がり、駅舎には布製の新巻き鮭のつるし飾りが飾られました。普段からも駅舎には、様々な「つるし雛」が飾られています。
●釜石駅
 駅の愛称は「鉄と魚とラグビーの町」。釜石市では日本で初めて洋式高炉が稼動し、その企業のラグビーチームが活躍したことに由来します。鉄の町の玄関口として、日本の鉄産業の歴史に貢献してきた駅舎として、『東北の駅百選』に選定されています。震災復興のシンボルのひとつとして、「釜石鵜住居復興スタジアム」が建設され、2019年にラグビーW杯日本大会の試合が行われたことは、記憶に新しいでしょう。尚、スタジアムの最寄り駅は鵜住居駅ですが、釜石駅にも大きなラグビーボールのモニュメントがあります。
●綾里駅
 全国的に見ても技術が高い、豪華な木造建築です。駅の愛称は「綾姫の里」。この地に機織りを伝えた綾姫の伝説に由来します。旧三陸町の中心、メルヘンチックな外観が印象的な駅舎として、『東北の駅百選』に選定されています。

■まとめ
 長期間の掲出でしたが、1ヶ月を無事に終えることが出来ました。ご参加くださった皆様には心より御礼申し上げます。
 不安や重圧が一連の新型コロナウイルス感染問題により加算された今だからこそ、創作を行う皆様の作品の持つエネルギーで励まされ、心を癒やされた方も多かったと感じています。今回は実物作品ではございませんでしたが、印刷物だからこそ実現出来た企画であり、ポスターだからこそ思いを伝えられたのだと実感しています。
 この度、多大なご協力を頂きました三陸鉄道、後援頂いた岩手県観光協会、岩手日報、テレビ岩手の皆さまにも、改めて厚く御礼申し上げます。
 趣旨とは少し離れますが、2019年から本年までに開催した展示イベントの報告書には、新型コロナウイルスの影響について触れないわけにはいきませんでした。国民全員が外出を控えている時期であることを考えれば、本企画も全く影響がなかったとは申し上げられません。ですが、ひとつの限定された会場で展示する催しと比べますと、比較的感染リスクが低く、新型コロナウイルスの余波を受けにくい方式だったのではないかと考察します。つまり、大勢の観客を動員するイベントが制限されるコロナ禍でのイベントとして、新しい可能性となったのではないでしょうか。今後もこうした時勢も考慮した作品発表・展示方式も提案できればと思います。また、引き続き被災地の復興を応援してまいりたいと考えております。皆様の変わらぬお力添えを賜りますよう、今後ともよろしくお願い申し上げます。

[COLORS OF MIND 3.11 記憶と伝承の色彩展実行委員会]