本書は、日本とイランの代表アーティストの作品を収録し、日本全国の美術館約200箇所のみならずイランの美術館や博物館、大統領府を筆頭に官庁舎等の公的機関約300箇所に寄贈され、日本とイランの文化交流の足跡として恒久的に保存される作品集です。
また、在東京イラン大使館を始め、日本とイランの芸術を愛する人々の協力によって実現した、両国の歴史上類を見ない、初めて為し遂げられた事業であり、新しい文化交流の歴史のさきがけになった一冊です。
日本・イラン友好90周年について
外務省の主導により交流行事が推進されている通り、本年は日本とイランが正式な国交を樹立してからちょうど90周年にあたります。両国交流の歴史そのものは非常に長く、最古のものは奈良時代まで遡ります。正倉院の宝物庫にイラン(ペルシャ)様式の工芸品が数々残されている以外にも、『続日本紀』に帰国した遣唐使とともにペルシャを表す「波斯(はし)人」が来日し、聖武天皇に謁見したという記述が残されており、また奈良市の平城宮跡から出土した8世紀中頃の木簡にも「波斯(はし)」と同じ読みの姓を持つ役人が存在しています。これらは、シルクロードを経由して古代日本にイランの人々が渡来していた証左となっています。
あるいは、ペルシャ猫やペルシャ絨毯といったイラン伝来のものは日本人にも馴染みが深く、多くの権力者にも愛されてきました。重要文化財として京都国立博物館に所蔵されている鳥獣文様陣羽織などがその代表例で、豊臣秀吉がペルシャ絨毯を非常に気に入って陣羽織に作り変えたものとして知られています。 現代においても、スポーツ関連を中心にイランとの交流が活発で、政治面でも2018年に河野太郎外務大臣日本が、アメリカの対イラン制裁に同調せずとの談話を発表するなど、良好な関係を持続してきました。