会期 2018年11月15日(土)~17日(月)
会場 奈良県春日大社 着到殿

春日大社創建1250年を迎えて

 神護景雲(じんごけいうん)2年(768年)に、称徳天皇の勅命により、平城京の東郊、御蓋山(みかさやま)の西麓に位置する現在の場所に壮麗な社殿を造営し、千葉県香取から経津主命、また大阪府枚岡から天児屋根命・比売神をお招きし、平城京の鎮護としてお祀りしたのが春日大社のはじまりです。
 創建以来、藤原氏の氏社として発展し、朝廷から庶民に至るまで広く信仰を集めてきました。全国3000に及ぶ春日の分社や、奉納された3000基の燈籠は、その厚い信仰の広がりの表れだと言えるでしょう。また能舞台の松は春日大社参道の「影向の松」であるなど、神事との結びつきで様々な文化芸能の発展にも関わってきています。平成10年12月には、春日大社や春日山原始林を含む「古都奈良の文化財」がユネスコの世界遺産に登録されました。
 今日も昔と変わらず、毎朝毎夕の神事のご奉仕をはじめ、年間2200回に及ぶ祭りごとが行われ、日本の国はもとより、世界の平和、万民の幸福、そして共存共栄が祈り続けられています。
 そして創建1250年を迎えた平成30年。9月には舞楽奉納や参拝無料開放などさまざまな形の奉祝行事が行われ、春日大社が位置する奈良公園でも関連イベントとして「春日野音楽祭」が開催されました。さらに2月の節分と8月の中元(お盆)に年中行事として執り行われる万灯籠が、本年は本展「まほろばのあかり奉納芸術祭 春日大社2018」と同日にも執り行われていました。

まほろばのあかり奉納芸術祭 春日大社2018
 小社ではこのたびご縁をいただき、春日大社創建1250年の奉祝行事の一つとして、灯籠にアート・文芸作品を加飾して会場に期間限定で展示するイベント「まほろばのあかり奉納芸術祭 春日大社2018」を、2018年9月15日(土)から17日(月)にかけて春日大社 着到殿にて開催いたしました。
 奈良はあかり、そして火に大変縁の深い町です。奈良の年中行事を見ても正月明けの若草山の山焼きにはじまり、3月の東大寺お水取りの松明の火、5月に行われる興福寺薪能の篝火、節分とお盆に灯される春日大社の万燈籠、高円山の大文字送り火と続きます。このようにあかり、火は奈良の歴史に大きな意味をもつものであり、あかりは古来より神様への感謝を表すものであったことを考えると、万葉の都・奈良から、あかりに灯された灯籠アート作品を発信することは大変意義深いイベントだと考えております。
 過去には、2008年の平城京文学祭「和のあかり」展を、2014年と2016年には薬師寺で奉納芸術祭を開催し、歴史的建造物とあかり、現代アートとの見事なコラボレーションが評価され、参拝者、観客など多くの人々の反響を呼びました。今回も正岡子規の子孫にあたる正岡明氏監修のもと、アートや詩歌を作品に合わせたイラストとともに加飾した灯籠約100基にあかりを灯して展示。あわせて短詩形文学の作品を募集し、正岡明氏の選考で400点余りの作品もパネル展示しました。さらに、出展者の方々による公式参拝行事を執り行い、灯籠作品を収録した図録を春日大社に奉納しました。
 会場には出展者はもとより、奈良在住の文学作品応募者や国内外の観光客も数多く来場し賑わいを見せていました。本展が毎日新聞奈良版に紹介されたことで反響も大きく、なかでも万灯籠が開催される日没後の来場者が目立ち、灯籠のあかりに照らし出された幻想的な空間を堪能する姿が印象的でした。
 9月15日には、日本料亭の天平倶楽部において懇親会が執り行われ、出展者の方々やその同伴者を含め40名ほどが参加しました。国民みらい出版代表と正岡明氏による挨拶、乾杯のあとには正岡明氏監修の「子規の庭」の見学や、美しい庭園をバックに記念撮影など行われ終始なごやかな雰囲気に包まれていました。

懇親会ご挨拶
国民みらい出版 代表取締役 小林義隆

 本日はご多忙中のところ、「まほろばのあかり奉納芸術祭・春日大社2018」にお越し頂き、誠にありがとうございます。本展開催にあたり、全面プロデュースしてくださいました正岡明先生および、ご出展者の方々には厚く御礼申し上げます。国民みらい出版の代表と致しまして一言ご挨拶申し上げます。
 本展は春日大社において和紙灯籠に皆様の作品をあつらえた展示物を着到殿において展示し、出品作を一冊の図録にまとめ奉納いたします。皆様ご存知の通り春日大社は世界遺産に登録され、国内だけでなく世界中から毎年多くの参拝客が訪れます。今回、このような場所をお借りすることができたのもひとえに奈良県にお住まいの正岡明先生のご尽力あってのことです。正岡子規の末裔として、奉納する作品の選出にも関わってくださっていました。この後、春日大社本殿にて奉納式典も執り行われる予定であります。このような弊社にとっても大事業ともいえる企画が実現しましたのも、皆様の素晴らしい作品があってのことと思います。改めてお礼申し上げます。
 最後に、今年は7月の西日本豪雨、そして先日関西を直撃したばかりの台風21号、その直後に起きた北海道地震と、平成最後の夏は過去に例を見ない程の連続した災厄に見舞われております。被害に遭われた方々の一刻も早い回復を祈りつつ、開会の挨拶とかえさせて頂きます。本日は誠にありがとうございました。

正岡子規研究所主宰 正岡明氏

 ご遠方よりはるばる奈良は、ここ「子規の庭」にお越し頂き誠にありがとうございます。今年は奇しくも春日大社1250年という記念すべき年にあたります。そしてこの3日間盛大な奉祝行事が執り行われ、万燈会と言って3,000基の灯籠に火がともりますが、その中に我々の灯籠も展示される運びとなりました。
 さて、今年は日本も大変な災害に見舞われ、皆様方の御苦労も想像を絶するものと思われます。中でも今年は何度もこの近辺が台風の進路となり、先日の台風21号は奈良のすぐ右側が進路にあたり、猛烈な暴風が吹き荒れました。奈良公園あたりは、たくさんの大木が倒壊しました。今回の展示会場である着到殿が倒木の直撃を受けたというニュースが流れ、かけつけた所クレーンで撤去中でした。幸い少し屋根の一部が損傷しただけで、事なきを得てほっといたしました。やはり春日の神様がお守りくださったのかもしれません。神様と言えばこの春日山は、春日大社が創建されるもっと前から御神体として人々の信仰の対象となっていたそうです。
 私は樹木医として毎年NHKのカルチャーセンターでこの森を案内する講座を持っておりますが、この原始林は実に神秘的な魅力を持っています。雨上がりの山には、真っ白のもやが垂れ込め、非常に神秘的な景観となります。この「もや」は「神気」神の気と言って、山から「気」が降りてくるという言い伝えがあります。皆様、どうかこの「気」を浴びて元気になってお帰り頂きたいと思います。

最後に
 本展が多くの来場者を集め、成功のうちに収めることができましたのは、本展の趣旨にご賛同くださり、全国から作品を出展くださいました出展者の皆様はじめ、ご縁をいただいた春日大社関係者の皆様のおかげであると感謝しております。心より御礼申し上げます。
これからも私たち国民みらい出版は芸術・文化の発展に力を尽くしてまいる所存です。皆様方のさらなるお力添えを賜りますようお願いいたします。皆様方のご発展、ご健康を心よりお祈り申し上げます。