Charity Art Exhibition Cambridge 2012
会場:嘉悦ケンブリッジ教育文化センター
前期2012年5月21日(月)~23日(水)
後期2012年5月25日(金)~27日(日)
■学問の街 ケンブリッジ
ロンドン市街から列車で約一時間、都会の雑踏を離れた場所に存在するケンブリッジ。本展の開催にあたって当社が最も苦労した点は、会場が美術館や博物館ではなく、教育機関の施設であるということです。
美術イベントでの使用実績のある会場ではありますが、常にそのような使用がされているわけではありません。展示をするうえでの設営はある意味ゼロから用意する形になりました。またご来場をされる客層についても、漠然と「美術展だから見に行こう」という方々ではなく、この展覧会に学術的な意味やテーマを求め、「私はこれを見てこういう勉強をしたい」というテーマを具体的に設定してご覧になられる方ばかりでした。
言うなれば作品を見て楽しむというより分析して自分の知識や見聞を広めて喜ぶという来場者ばかりでしたから、これまで運営してきた展覧会に比べ気難しいタイプの来場者が圧倒的に多く、気苦労の絶えない状況だったというのが本音ですが、出展された作品はそういった方々の知的欲求を満たしてくれたようで、満足げな顔でお帰りになる方が目立ちました。
■国籍、性別、人種、年齢…多様な考え
会場となった嘉悦ケンブリッジ教育文化センターは、世界各国で名を馳せる女流芸術家の作品をコレクションしていることで有名なマリー・エドワード・カレッジの敷地内にあるホールで、日本文化を英国で広めるための講座が多く開設されている場所でもあります。
会期の間にも池坊流の華道や水墨画など、様々な教室が本展会場の上階で開かれていて、教室の始まる前や終った後に本展をご覧になられる受講生の皆様が多くいらっしゃいました。
それに加え世界中から留学に来ている学生さん達も見に来られ、聞いたことの無いような言葉で挨拶をしてくる頭にターバンを巻いた方が入ってきたと思えば直後に「こんにちは」の挨拶とともに日本の方がいらっしゃるといったシチュエーションもしばしばでした。ケンブリッジという都市が学問という共通の目的のもとにまさにワールドワイドな場所であるというのを再認識させられた次第です。
私が特に印象に残っているのは研修の為に学年ごとケンブリッジを訪れているフランスの小学生の一団です。授業の前後に会場を見学し、美術作品や漆うちわを興味深そうに、そして楽しそうに見ていました。
男性と女性、地元の人と遠路から訪れた人、若い人と年配の人…立場が違えば考え方も違ってきます。
本展はこうした多様な価値観、あらゆる角度からの目線に対して日本の文化を伝えられたことは、本展における大きな収穫のひとつといえます。
■日英の絆 震災復興チャリティ
2011年3月11日、我が国に深刻な被害をもたらし、1年以上たった現在においてもなお爪痕を残す東日本大震災。本展の重要なテーマである東日本大震災の復興支援についてもご報告させていただきます。会場には震災の被害や現在の復興状況を伝えるインフォメーションボードを貼り出しました。加えて詩歌作品の展示に被災地福島県の名産である桐を使った伝統工芸品の『会津漆うちわ』を起用したことでも訴え、ご来場の皆様への復興支援を呼びかけに役立ちました。
寄付金も、会場と寄付の受付先であるジャパン・ソサエティ(在英邦人の組合)への両面から集まり、現地においての東日本震災に対する関心の高さが強く伺えました。
両国の絆といえばもうひとつ、本展は文化交流という面においても大きな役割を果たせたのではないかと思います。
後期展初日にあたる5月25日夜に会場の上階にて本展との連動企画として和太鼓演奏のイベントが催され、事前の告知を見た日本文化好きの人々が数多く展示会場にも足を運んでいただきました。これは会場側のご厚意により発案、実行されたことで、本展が日本芸術、文化の祭典であるという印象を現地の人々に残す上で大いに役立ちました。
■来場者の声
・まさに日本という雰囲気を感じさせてくれます。こちらでは普段決して見る事ができないので新鮮です。
・素敵なポストカードが多いですね。母が老齢になり、電話で話すのが辛いためによく手紙を出すのですが、この葉書を送ったら大変喜んでくれると思います。
・日本から移住してきて長くなりますが、とても懐かしい気分にさせてくれる展覧会でした。
・日本に詳しいつもりでしたが、福島にこのような伝統工芸があるというのは知りませんでした。勉強になったと同時に、こういう文化をはぐくんで来た土地が災害で大変なことになっていることを思い返し、心が痛みます。
・作品を見ていると、国境を越えて運ぶ苦労もそうですし、これだけのものを作る苦労が偲ばれます。感謝したい気持ちです。
・ここケンブリッジは学生の街なので、最初は日本の学生さんの展覧会なのかと思ったのですが、伺ってみたら私と同年代の方の作品が多いということでびっくりしました。日本の方は感性がお若いんですね。
・展示されている作品を見て、率直に思ったのは『優しさ』を感じさせてくれる作品が多いということです。作られた皆さんの人柄が伝わってくるのでしょうね。
・短歌というのは、簡潔にそして奥深く製作者のテーマがわかるのが魅力ですね。
・イギリスは日によって暑かったり寒かったりで、気候の変化が激しく、逆に言うと季節の感覚に乏しい国です。展示されている俳句作品を見ていると、日本は四季それぞれの素晴らしさを感じられる国だというのがわかりますね。
・刺繍や書道の作品を見てとても驚きました、作業が非常に細かくて感動的です。
・書道や水墨画は中国に由来し、絵画をはじめとする西洋美術はヨーロッパから伝わったものですが、それらに比べてマイルドな印象を受けました。日本人ならではの感性だと思います。
■最後に
本展は様々な来場者に恵まれ、心温まるご支援を頂き、文化交流と震災復興チャリティという両面で成果を上げることができました。しかしながらそれは出展者の皆様とその作品に助けられての結果に他なりません。ご出品頂いた皆様へ深く感謝申し上げますと共に皆様の今後のご活動における更なるご発展をお祈り申し上げます。