会期 2018年5月25日(金)~27日(日)

■第一会場
新宿区立漱石山房記念館

■第二会場
新宿区立新宿文化センター・B1F展示室

 明治元年から起算して満150年となる、2018年。政府は「明治150年」と題し、明治以降の歩みを次世代に遺すこと、明治の精神に学び、日本の強みを再認識することを目的に、内閣官房の関連施策推進室が中心となって「明治150年」プロジェクトに取り組んでいます。
 明治期は、芸術・文学の分野においても激動の時代でした。現在私たちが知る文学や芸術のスタイルのもととなる近代美術や近代文学の定義が新たに確立された時期であり、美術史・文学史で最も重要と言っても過言ではない時代です。明治時代の先人が切り拓いたように、私たちも芸術や文学を通して新たな日本の時代を創造していかなければなりません。そして明治以降の歩みを次世代に遺すべく、「明治150年 芸術文化維新展」を企画、2018年5月25日(金)から27日(日)にかけて、漱石山房記念館、新宿文化センターにおいて開催しました。
 本展は、文学と美術、それぞれの分野で会場を分け、2か所による同時開催形式にて行われました。さらに会期中には周辺で「明治150年」関連の催しも数多く開催されており、本展もそのひとつとしてプロジェクトの機運を高める一助となったと自負しております。
 会期中は晴天に恵まれ、初夏を感じさせる陽気となりました。
 第一会場の漱石山房記念館に展示されたのは、短詩型文学を中心とした文学作品です。正岡子規研究所主宰の正岡明氏所有の貴重な資料も同時展示されました。そのほか、俳句・短歌・川柳・現代詩と、正岡子規の俳句や短歌作品をコラボし、カットイラストとともに石板に彫刻した「御影石文学石板」は、新しい表現の試みともいえ、来場者も興味深そうに鑑賞していました。
 同記念館は、夏目漱石が生まれ、また亡くなるまでの約9年間を過ごした新宿・早稲田南町に昨年9月にオープンした施設で、現在は漱石に関わる貴重な資料が展示されています。正岡子規は漱石の親友だったという縁もあり、まさに本展覧会にぴったりの会場となりました。
 展覧会初日となった5月25日には、新宿区長の吉住健一氏が訪問され、正岡明氏と会場を鑑賞されました。この様子は新宿区公式ホームページでも紹介していただいております。また同日はJ:COMのテレビ取材も入り、夕方のニュース番組にて展覧会の告知をしていただきました。
 第二会場となった新宿文化センターでは絵画、写真、書道、工芸、いけばな、服飾など多種多様な分野のアート作品が展示されました。同センターは、コンサートや演劇、バレエ、展覧会、講演会など分野を問わず、あらゆる文化的なイベントが催される新宿最大の総合文化施設です。開館からまもなく40年を迎え、都庁や百貨店、歓楽街など多角的な顔を持つ新宿の地で、芸術文化の発信を長く担ってきた会場にふさわしい、個性あふれる作品が並びました。同時に、地域に密着した展覧会開催の一環として、近隣にお住まいの方々の協力をあおぎ、「チャームスイート新宿戸山」の入居者様により、ハガキに描かれた水墨画やポーセラーツのティーカップなどを出展いただきました。
また特別展示として、正岡子規研究所主宰・正岡明氏が明治の偉人たちを紹介したコラム記事『明治の外交官・加藤拓川への手紙』(毎日新聞で全43回連載)の復刻版も抜粋して展示しました。これらのコラムは正岡子規の叔父であり、正岡明氏の実祖父にもあたる加藤拓川が、外交官として数多くの著名人と親交を持ち、拓川宛ての貴重な書簡やハガキなどを子孫である正岡氏が解説したもので、明治の精神を今の時代の人々に伝える本展のテーマに花を添えてくれました。
 展覧会初日の25日には、同施設の別室にて正岡明氏の講演会も開催されました。文学作品などの評論家でもある同氏より、正岡子規と夏目漱石の友情にまつわるエピソードが紹介され、来場者は熱心に聞き入っていました。
 多くの出展者の方々にもご来場いただいた本展では、各創作者の皆様が違う分野の作品も熱心にご覧になり、研究される場面も多く見られ、維新のエネルギーを思わせる熱気があふれていました。また会期中は同会場にて定期演奏会などさまざまなイベントが開催されており、それらの関係者の方も数多く来場してくださいました。
 会場では、多岐にわたる展示作品に見入る来場者の姿があちこちで見られました。ときに顔を近づけたり、写真におさめたりと、数々の芸術作品から受けた感動をより深く味わおうとする様子が印象的でした。アンケートにご協力いただいた来場者の方には、出展作品を印刷した明治150年ロゴマーク入りの特製しおりを贈呈。どれにしようかと迷う方も多く、皆様に喜んでいただきました。

講演会の様子

 正岡氏の講演は『明治の青春群像と友情』と銘打たれ、親友として有名であった明治の文豪、子規と漱石について、また司馬遼太郎が「友人をつくるために生まれてきた人」と評した加藤拓川の交友関係なども探るなかで、彼らの人物像が鮮明に炙り出された内容でした。子規を支えた人物達を顕彰し、その生き様や考え方について、そして子規と漱石の友情が近代の「新しい日本語」を切り拓いたことが解説されました。さらには本展の主旨に合わせて絵を描くことを好んだ子規のエピソードも交え、二人の絵画論についても語られました。

 本展の開催にご尽力いただきました両会場のご関係者各位、ならびに新宿区長 吉住健一様、「チャームスイート新宿戸山」の入居者各位および職員の皆様方に、この場を借りて御礼申し上げます。
 そして何より、本展が多くの来場者を集め、成功のうちに収めることができましたのは、本展の趣旨にご賛同くださり、全国から作品をご出展くださいました創作者の皆様のお陰でございます。誠にありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
 これからも国民みらい出版は芸術・文化の発展に力を尽くしてまいります。今後とも皆さま方の更なるお力添えを賜りますようお願い申し上げます。

~アンケートの一部をご紹介します~
「情景が頭に浮かぶ作品が数多くあり、感慨深い思いで鑑賞しました」
「子規の作品とあわせて共通点などを考えて鑑賞すると楽しみ方が新しいと感動しました。どの作品も個性があり、とても楽しむことができました」
「子規と作者とイラストの組み合わせが非常に美しいと感じました」
「とても繊細で、色合いも素晴らしく心癒される作品ばかりで優しい気持ちになりました」
「作者の気持ちが伝わってくる素晴らしい作品に出会えて嬉しかったです。ありがとうございました」
「一同に色々な作品が鑑賞できるのは非常にいいと思いました。更に様々な場所で展覧会を開催し続けてください」
「日本の伝統工芸だけでなく世界中のアートが展示されていてとても華やかで素敵な展覧会だと思いました」
「様々な素材の作品が多く、想像力を豊かにして鑑賞しました。とても楽しい時間を過ごすことができました」
「全体的にレベルの高い作品で見応えありました」