■会期 令和2年2月27日~29日
■会場 新宿区立漱石山房記念館

■英国ブランド紅茶と日本人アーティスト作品 史上初のコラボレーション

これまで国民みらい出版のオリジナルアートラベル企画といたしましては、ワイン、シャンパーニュ、泡盛と数々発表してまいりました。元号も令和と新たになり、企画も大きく飛躍を遂げようと、今回由緒ある英国紅茶ブランドとタッグを組みました。弊社のみならず業界でも初の試みで交渉は難航しましたが、実行委員会の熱意と皆様日本人創作者の作品の質の高さを前面に押し出すことで、実現に至りました。ぜひお手元にお届けした紅茶をごゆっくり味わいながら本報告書をお読みください。

■文学ファンの聖地「漱石山房記念館」 

会場となった「漱石山房記念館」は、2017年に夏目漱石生誕150年を記念して、漱石が生涯を閉じた場所に開館されました。英国留学以降、紅茶をこよなく愛し、生涯愛飲した漱石にあやかる意味でここを本企画お披露目の場に選びました。

漱石には紅茶にまつわる数々のエピソードが残されています。当時は高級品だった紅茶を教え子に惜しげもなく振舞ったそうです。また、漱石の長男・夏目純一は著作『父の周辺』で「朝食は(中略)父だけはパンだった。僕らが味噌汁で父は紅茶だ」と書いています。

「漱石山房記念館」周辺には、誕生の地の石碑、小説に登場するモデルになったお寺、漱石が愛用の原稿用紙を買い求めた文具店などもあり、“漱石の散歩道”として今でも多くの文学ファンが散策し、記念館とその周りをにぎわせています。

■ASHBYS OF LONDON‐アシュビィズ オブ ロンドン

本展にご協力いただいたブランドは、「ASHBYS OF LONDON‐アシュビィズ オブ ロンドン」。紅茶ブレンダーメーカーとしてジェームス・アシュビィ氏が英国で1850年に創業しました。アシュビィ氏は独自のブレンド技術と品質を早くから構築し、多くのクライアントから紅茶ブレンドの依頼を受けるようになります。そうしてアシュビィ氏が創業したオリジナルブランド「ASHBYS OF LONDON」は、長きに渡り英国人に愛され続け、今日では英国有数の紅茶ブレンダーメーカーとして地位を確立しています。漱石が渡英したのが1900年ですから、もしかしたら漱石も「ASHBYS OF LONDON」の紅茶を飲んだかもしれません。

今回皆様にお届けした茶葉は、香り豊かでリッチな印象の「オールドロンドン」と上品な渋味が心地よくまろやかな「ティープリンセス」。「ASHBYS OF LONDON」の中でも一番人気と二番人気の紅茶です。生産地の最高品質茶葉を選りすぐり、熟練のティーブレンダーが伝統あるブレンド技術を駆使して、それぞれの特徴を引き立てつつも独自の味わいを作り出しています。

■高級感あるティーラベルが並ぶ壮観な展示 

展示場は、漱石が手掛けたありとあらゆる書物が閲覧できる図書室に隣接した一室。入口から奥まで見通せ、すべての展示が一目で確認できるレイアウトでしたので、高級感漂うラベルがずらりと並ぶ展示は煌びやかでした。

サイズは小さめながらも凝った作品、詩情あふれる作品を前に、来場者の多くが熱心に鑑賞されていました。いつもの展示会と比べてもおひとりの在廊時間が長く、最初はもの珍しさが先に立っていた方も徐々にのめり込んでいく様子が散見されました。

頻繁に記念館や図書室に訪れる常連の方々も、いつもと様子の異なる特別展示に関心を示され、図書室入室前に立ち寄られました。漱石と紅茶の関わりをご存じの方も多く、本展の試みを高く評価していただきました。

■監修・正岡明先生のおもてなし

本展の監修を務める正岡明先生も奈良から駆けつけてくださいました。漱石と同い年で、東大予備門の頃に出会い、無二の親友となった正岡子規。そのふたりの仲を証明する貴重な資料をお持ちになり、出展者や来場者の皆様に対し、熱心にご案内されました。ご出展者の中には、念願かなって正岡先生と初対面を果たし感激される方、久しぶりの再会に積もる話に花を咲かせる方、正岡先生を中心に人の輪が連なりました。

詩歌分野専門の正岡先生も、弊社のイベントを重ねるごとに美術方面にも明るくなり、生来の社交性とあいまって、会場の空気を和やかに導いてくださいました。また、今回残念ながら来場できなかったご出展者の方々にも「いずれどちらかでお会いしましょう」とのお言葉を残されました。

■来場者アンケート一部紹介

「情景が目に浮かぶような文芸作品に心惹かれました」

「素朴な可愛らしい作品が多くて心が癒されました」

「紅茶をいただく時のことを思いながら作品鑑賞して、新しい試みの展示会に新鮮な気持ちになれました」

「実物の作品も華やかでいいのかもしれませんが、紅茶缶になった作品も可愛らしくていいと思いました」

「立体感や色合いが巧みに表現されていて高貴な印象を受けました」

「夏目漱石を想像しながら鑑賞して、当時にタイムスリップしたかのような感覚を味わうことができて楽しかったです」

「皆さんの作品を鑑賞して、とても勇気と元気をいただきました。日々ゆとりを持って過ごすことの大切さも再認識することができて感謝しています」

■最後に 

皆様もお察しされているかと思いますが、本展開催に至るまで不測の事態がいくつかありました。ウィルス感染の影響で一時は会場自体が休館かという危惧、また弊社も主催者として感染拡大を懸念し、自粛という選択も検討いたしました。刻一刻と変動する世情を鑑み、記念館ともお話を繰り返し、会場の衛生管理と対策を徹底することで開催実施の判断に至りました。

来場者が手を触れる可能性があるものの事前消毒、スタッフのマスク着用・定時ごとの手指消毒、来場者の入室前の手指消毒。弊社としては初めて尽くしの展示会となりましたが、完遂したがゆえに今後の課題として見えてきたものもありました。あらゆる事態への備えや、迅速かつ正確な判断・対応。さらに研鑽を重ね、ご出展者の皆様に安心してご参加いただけるイベント運営の枠組みを構築していきたいと考えます。

本展が開催できましたのも、最後までご信頼くださり、弊社に託してくださったご出展者皆様のおかげです。今回ほどそれを強く感じた催しはありませんでした。この度の英国紅茶とのコラボレーションが皆様に新たなインスピレーションを与える一助となり、今後の制作に生かされ、更なる名作を生み出すきっかけになることを願っております。皆様のこれまで以上のご活躍を心よりお祈り申し上げます。

最後になりましたが、ご来場くださいましたすべての方々に感謝申し上げます。

[詩歌と美術のティーパーティー実行委員会]