会期 2016年8月6日(土)~8日(月)
会場 広島県民文化センター

主催:平和の祈り芸術展実行委員会
企画・運営:株式会社国民みらい出版
後援:広島市・中国新聞社・中国放送・広島テレビ

会場の様子(式典・懇親会)

 本展の会場となった広島県民文化センターは、ノーモア・ヒロシマの象徴である原爆ドームの目の前にあり、市民の文化交流の場として親しまれている施設です。午前9時に開場した地下1階の展示スペースには、日本全国から集まった様々な美術系の作品や、俳句、短歌、川柳、現代詩、エッセイなどの文学作品、原爆被災直後の広島の惨状を撮影した写真、そして世界中の偉人、著名人の発言を収録した平和のメッセージを組み合わせた、『平和の祈り文学パネル』が展示されました。訪れた来場者は、ご出展者の皆様の平和への願いが込められた作品を見て思いを巡らせる様子で、会場内をゆっくりと鑑賞されていました。中には作品について受付のスタッフに熱心に質問する方や、気に入った作品をアンケート用紙に記入する方など、熱心に観賞される方も見受けられました。
 14時になり「平和の祈り芸術展 2016 広島」開会式典が開催されると、会場内は厳粛な雰囲気に包まれました。小社代表・小林義隆のご挨拶から始まり、来賓としてご出席いただいた平山郁夫美術館館長・平山助成様、NPO法人広島横川スポーツ・カルチャークラブ事務局長・三谷光司様、出展者代表・熊本隆繁様のご挨拶、同じく出展者代表・丹羽名甫様の書道揮毫が行なわれ、オープニングセレモニーは無事終了しました。
 15時からは施設内にあるレストランへ移動、懇親会が執り行なわれました。テーブルを囲みそれぞれの分野で活躍されるご出展者様同士で語らいながら会食の場を持ち、戦争を体験された世代の方もそうでない方も、8月6日の広島という特別な時と場所を感じ、平和というものについて改めて考えるひとときを過ごされました。
「平和の祈り芸術展 2016 広島」式典ご挨拶

国民みらい出版 
代表取締役 小林義隆

 本日はご多忙中のところ、「平和の祈り芸術展 2016 広島」及び「平和の祈りメッセージ展」のセレモニーにお越し頂き、誠にありがとうございます。本展開催にあたり、平山郁夫美術館館長・平山助成様、NPO法人広島横川スポーツ・カルチャークラブ事務局長・三谷光司様、また式典にご協力くださる熊本隆繁様ならびに丹羽名甫様をはじめとした全てのご出展者様に、厚く御礼申し上げます。国民みらい出版の代表と致しまして一言ご挨拶申し上げます。
 弊社はこれまで、ホノルル、バリ、沖縄において「平和の祈り展」を開催して参りました。特に昨年の終戦70年を記念した特別企画『平和の祈り芸術展』は、世界遺産であり、また戦跡としても知られている沖縄県の首里城において展覧会を開催するだけでなく、「平和のメッセージ」を収録した作品集を制作し、全国各地の戦災資料館に寄贈し大きな反響をいただきました。
 そして今年は、この広島において、芸術を通じて平和へのメッセージを発信していく本展が実現し、新たな第一歩を踏み出すことになりました。今年はアメリカ合衆国のオバマ大統領が広島平和記念公園を訪れるという歴史的な出来事があり、世界的に報道されたこの広島という場所で、8月6日この日に平和を訴えることは特別な意味のあるイベントであると考えています。これも一重に皆様のご協力・お力添えによるものと、心より感謝すると同時に、御礼申し上げます。
 終戦から71年が過ぎた今年、世界に目を向ければ、残念ながら悲惨なテロ行為が立て続けに起こっています。戦争やテロ行為等の犠牲になる人がいなくなるような世界に一日も早くなってほしいという願いが、本展を通じて一人でも多くの方に伝えられたら幸いです。
 最後に、今後100年200年と戦争のない平和が続くことをこの広島の地で祈り、開会の挨拶とかえさせて頂きます。本日は誠にありがとうございました。

平山郁夫美術館
館長 平山助成様

 平山郁夫美術館館長の平山助成と申します。兄の平山郁夫は私よりも12歳上です。わたくしどもの生れは瀬戸内海のほぼ中央部にある瀬戸田町の生口島で、小学校を卒業した後、広島の修道中学校で学んでおりました。
8月6日、兄の平山郁夫は学徒勤労動員先の広島陸軍兵器支廠で被爆しました。作業するために服を着替えてちょっと外へ出てみると物凄い爆音がしており、何だろうと見ていたところB29が3機飛んできて、白いパラシュートのようなものを3つ落としたそうです。それを友達に知らせるために作業準備をする部屋に入ったところ、目の前でフラッシュをたかれたような大閃光。しばらくすると大爆音で、一瞬何が起こったのか全く分からない状況に陥ったそうです。兄は幸いなことに壁を隔てての被爆だったので無傷でしたが、周囲の様子はほとんどがめちゃくちゃになっていました。爆心地から1.5㎞離れた場所だったのですが、みるみる町が焼け野原と化していき、人々は川沿いを逃げまどい川に飛び込んでいったそうです。兄はあくる日には瀬戸へ帰れたそうですが、復学するまでに3カ月の期間を要したそうです。画家というのは見れば映像として記憶するようなところがあります。原爆を投下された惨状は、二度と見なくない悲惨な光景だったと語っていました。
 その後、東京美術学校に入学し、二度と原爆のような惨状が起こらないように、平和への祈りを込めた絵を描くようになるのです。当初は瀬戸田ののどかな島の風景を描いていましたが、何をテーマとして描くかを悩む時期もあったようです。ちょうどその頃、原爆症と思われるような後遺症が発症しました。このままでは何とかしなくてはと閃いたのが、「玄奘三蔵が旅に行かれた様子を絵にしようと、仏教が伝わってきた経路としてのシルクロードです。様々な事柄が伝えられてきたシルクロードを、日本の特性に合うように工夫して描くようになりました。ラクダのような動物を使わないと砂漠地帯は歩けません。しかし平和でなければラクダで砂漠地帯を横断することはできないという、兄の平和への祈りが込められた作品が数多く残されています。
「平和の祈り芸術展 2016 広島」が盛会になりますように、そしてご出展者の皆様の平和への祈りがより多くの方々に届きますことを心よりお祈り申し上げます。本日は誠におめでとうございます。

NPO法人広島横川スポーツ・カルチャークラブ
事務局長 三谷光司様

 NPO法人広島横川スポーツ・カルチャークラブの三谷と申します。宜しくお願い致します。この法人は日本でも珍しい市民団体から立ち上がった女子のサッカーチーム、「アンジュヴィオレ広島」というチームを運営しております。元広島カープ選手の北別府さんと一緒に農業をしながら町興し、そして横川でレンタルギャラリーをオープンしております。
 わたくしどもは町興しをメインとして、広島を中心に日本が元気になるよう色々な活動をしております。その活動の一つとして、国連の発展途上国の人材育成を行うユニタールという組織が広島にございます。そのユニタールが国連としましても初めてアフガニスタン女子のスポーツ選手を平和や人材育成なども兼ねて広島に招きました。そこでサッカー選手でもあるアンジュヴィオレも色々と関わらせていただき親善試合など行いました。平和記念公園にて献花をしたり、体験者の話を聞いたり自国に帰った彼女たちが自分の国を平和に導くようにと研修をお手伝いしました。アフガニスタンという国はまだ男尊女卑の社会で女性はサッカーをする時は命がけでやらねばならない状況です。日本に来て女性が一人で夜道を歩いていることに非常に感動しておりました。アフガニスタンの環境自体が整っておらず、日本の安定した平和に感銘を受けるとともに、アンジュヴィオレ日本の選手たちは、平和な暮らしに守られていることへの感謝の気持ちを持つことができました。平和を発信したということもありますが、こちらも平和に関して様々なことに取り組んでいこうと、選手ともども感じております。
 広島に原爆が投下され71年が経ち、これだけの復興を遂げた広島の町を見たアフガニスタンの選手たちは、自分たちの国も平和を取り戻すことができる、という希望に繋がったに違いありません。サッカーを通じて、平和への発信を世の中へ広めていく活動を続けていきたいと思っております。
 本日は「平和の祈り芸術展 2016 広島」にお招きいただきましたこと、心より御礼申し上げます。そしてこの展覧会で芸術や文学を通して、平和への祈りが発信されますことを願っております。本日は誠におめでとうございます。

出展者代表 写真家(広島県) 熊本隆繁様

 この度「平和の祈り芸術展 2016 広島」にご参加いただき、出展者の皆様に広島市民及び被爆者を代表し心から御礼申し上げます。
 私は3歳くらいの時に、爆心から4キロの地点で被爆し、当時のちゃぶ台で食事中に爆風で吹き飛ばされた窓ガラスの破片が頭上を通り過ぎる様を、首をすぼめてやり過ごした記憶があります。姉は学徒動員による建物疎開のため、2キロ地点で被爆し翌日に亡くなりました。
 広島市は「核兵器廃絶 2020ヒロシマ宣言」を掲げ、世界に発信してまいりましたが、「ヒロシマの声」は思うように届かず、今日に至っています。私は被爆写真家個人として、ヨーロッパ、アジア、ロシアと核廃絶の写真展を開催し、各地で賞賛と共鳴をいただきました。私は、写団☆北斗七星で会員130名に写真の指導をしておりますが、この生徒たちとともに、広島市の目指す「核兵器廃絶 2020ヒロシマ宣言」に向けて、10年間に亘り「ヒロシマの心・祈りと怒り」を撮り続けてまいりました。この集大成を基に、2020年には広島、長崎に於いて、150作品を展示し世界に核兵器廃絶に向けたヒロシマからのメッセージを発信していきたいと考えています。この展覧会は長崎終了後、ロシアを皮切りに、東ヨーロッパ、EU、中東、アジア、アフリカ、北米、アメリカ、南米、オーストラリアを経由し、ハワイを最終目的地に地球一周の平和キャラバンとして「ヒロシマの心・祈りと怒り展」を開催する予定です。一年間で30カ国程度しか巡回できませんが、2年をかけて60カ国を目安に実施したく準備を進めております。
 被爆から71年、今年初めてオバマ大統領の広島訪問と慰霊碑への献花、広島スピーチが発せられました。これにより、永年くすぶり続けた核廃絶への歩みが、一歩前進するかもしれません。また、オバマ大統領の帰国後「核兵器先制使用禁止条約」構想が発せられ、核保有国に対してのスピーチが発せられました。このスピーチにより核廃絶が大きく前進する事を期待します。
 最後に多くの平和へのメッセージを広島に集結していただいた作家の皆様、本当にどうもありがとうございました。私の作品「ヒロシマの怒り」はどなたが見てもアメリカに対する怒りとお感じになられると思います。しかしながらこの怒りは、被爆国でありながら世界に向けてリーダーシップをとらない日本政府に対する怒りであるということを申し上げておきます。今、禁止条約を主導してくれる国はメキシコです。日本とは全く関係ない国が世界を主導しながら核廃絶に向けて動いてくれていますが、核保有国が参加しない条約はダメだというのが日本政府の言い訳です。しかし今回のオバマ大統領訪問によって日本政府も核廃絶に向けて動き出すのではないかと考えております。これによって一段も二段も核廃絶に向けて進むことを祈っております。
ご清聴ありがとうございました。

■8月6日 広島

 毎年執り行われる平和記念式典(広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式)は、原爆死没者の鎮魂と世界の恒久平和を祈念するため、平和記念公園前の原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)前において、原爆死没者の遺族をはじめ市民多数の参加のもと挙行されます。今年の式典には、被爆者や遺族ら関係者5万人ほどが参列し、犠牲者の冥福と世界の平和を祈念しました。
 広島市の松井一實市長と遺族代表が、今年1年間で新たに死亡が確認された原爆死没者名簿を慰霊碑に奉納し、遺族、被爆者の代表の方々が献花した後、原爆が投下された午前8時15分、「平和の鐘」が打ち鳴らされる中、参列者全員で1分間の黙祷を捧げました。

■特別企画展

 本展の後援をいただきました広島市に、5・27オバマ大統領訪問について取材形式で回答いただいた文書、広島平和記念資料館の東館(現在改修工事中のため閉館)に展示されていた広島市の歴史、「平和への歩み」の使用許可をいただいた資料、中国新聞社5月28日朝刊・号外のオバマ大統領訪問に関する記事を展示しました。

最後に

 本展開催につきましては、多方面の方々にご尽力いただき無事執り行うことができました。本展へメッセージを寄せていただいた広島市の松井一實市長と後援を引き受けていただいた広島市関係者の皆様、資料をご提供いただいた広島平和記念資料館の関係者の皆様、短冊メッセージを寄せていただいた広島県知事をはじめとする県内の市長、戦災資料館、広島県ゆかりの著名人の方々、そして何より全国から平和への願いが込められた作品をご出展いただいた創作者の方々のお力添えにより本展の成功を収めることができました。心より御礼申し上げます。今後とも皆様方のさらなるお力添えを賜りますようお願い致しますと共に、皆様方のご発展をお祈り申し上げます。

 

短冊メッセージを寄せていただいた広島県ゆかりの著名人(順不同)
広島県知事・湯崎英彦様/東広島市長・藏田義雄様/呉市長・小村和年様/廿日市市長・眞野勝弘様/衆議院議員・寺田稔様/参議院議員・柳田稔様/俳優・風見しんご様/歌手・島谷ひとみ様/タレント・島田洋七様/女優・戸田菜穂様/俳優・山口良一様/フリーアナウンサー・山中秀樹様/アンジュヴィオレ広島(選手5名)/サンフレッチェ広島(選手6名)/元日本代表・木村和司様/阪神タイガース監督・金本知憲様/阪神タイガース投手・福原忍様/東京ヤクルトスワローズ・高津臣吾様/中日ドラゴンズ監督・谷繁元信様/WBA世界元ミドル級チャンピオン・竹原慎二様/呉市海軍歴史科学館/筑前町立大刀洗平和記念館/福山市人権平和資料館・福山ピースラボ/平和祈念展示資料館

■来場者の声
「実に多彩な作品が展示されており、それぞれの中にそれぞれの人の人生、思想が包摂されているのだと感じました。私も何か発表できたらと思いました」
「緻密な鉛筆画の中から祈る心が強く伝わってきました」
「鮮明な色合いと優雅さに引き付けられました」
「字体が素晴らしく惹かれるものがありました。命の尊さを感じさせられました」
「色合いがなんとも言えず素敵でした。人間の苦しみもがきを感じます」
「色合いが平和を象徴しているかのように感じる作品が多かったです」
「色鮮やかで美しく画の中にある空間に涙が出そうになりました」
「立ち寄れて幸せでした!一つひとつの完成度が高く見どころ満載でした」
「予想以上にバラエティに富んでいて、それぞれの作品の質が素晴らしかったので、もっと多くの方に告知された方がいいと思います」